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<コラム>「並んだもの」がもつふしぎな効果

滋賀県立大学 大学院博士後期課程    小山 奈津季


 「ものを並べる」という行為は、学校の机やスーパーのカートなどのように、整理整頓のためや、空間の有効活用のために行われます。実は、「もの」がある規則に従って複数個並べられると起こるふしぎな物理現象があります。

 ドミノもその一つと言えるでしょう。ドミノは、ものが倒れるときに他のものにあたることで連鎖的に倒れていく現象を利用した遊びです。皆さんは、最後のドミノが倒れた瞬間に連鎖の波が逆流する現象を見たことがありますか?見たことのない方は、文字では分かりづらいので動画サイトなどで見てみてください。レンガのように分厚いものを長辺と同じ距離をとって並べると、すべてのレンガが倒したレンガにもたれた状態で最後のドミノまで倒れていく波が進みます。最後のレンガが何かにもたれることなく床に倒れた途端に最後から2番目に置いたドミノがもたれる先を失い床に倒れる、最後から3番目、4番目も同様に床に倒れるという連鎖が起きます(図表1)。これによって、最初に倒したレンガが床に倒れるまで逆流の連鎖が起きるのです。今年度(2025年度)の「青少年のための科学の祭典」では、この現象を起こすためにドミノの配置を試行錯誤してもらうブースを実施しました。レンガの並び方を工夫することで起きるふしぎな現象に魅了され、参加してくれた小中高生、保護者の皆さんはずっと手を動かしていました。

<図表1>


 私の研究もまた、並べることで起きる物理現象を扱っています。金や銀などの金属のナノ粒子は光を吸収してナノ粒子表面に強い電磁場を発生させます。この電磁場は、複数の金属ナノ粒子が密に並んだ構造の隙間に集中します(図表2)。私は、金属ナノ粒子を並べて局所的に強い電磁場を発生させる薄膜を作り、センサーや分子の検出に応用するための研究をしています。ナノ粒子はレンガと違って、見ることも掴むこともできません。なので、液中のナノ粒子同士の反発力や液体に働く界面張力を利用して、粒子を密に並べるための工夫をしています。

<図表2>


 私たちの周りには、いろんな機能を持つものがあります。その個々の機能だけでなく、並べたり、何かと組み合わせたり、工夫することで現れる機能に注目し、使いこなす方法を考えることもまた、「ものづくり」や「工学」に必要な考え方のように思います。私自身研究者として勉強中ですが、「青少年のための科学の祭典」のような場でそういった気づきを10年後、20年後の研究者候補の皆さんに共有できることは、とても貴重なことです。今後も、こういった機会を持てると幸いです。